第4回 ゴルフGT TSI、ゴルフ・トゥーラン
ガキに媚びないドイツ人気質とでもいったらいいのか。ツインチャジャージャーエンジンを与えられた今度のゴルフ。ちょいと気になるいいクルマだ。使って経済的で走れば楽しい……。そんなクルマがないものかと頭を捻っているドイツ車ファンには堪らなく嬉しい1台が登場したぞ……。
新しいゴルフの仲間ゴルフGT TSI
少しニラミの聞いたコワモテのフロントマスク。大型エアインテーク付フロントバンパースポイラー。スポーツサスが組み込まれ低めに身構えたフォルムは戦闘的だ。装備された225/45R17インチタイヤがTSIの高性能振りを周囲にアピール。TSIの目玉は、なんと言っても、スーパーチャージャーにターボチャージャーと2個も過給機を与えられていることだ。省エネが世界中で叫ばれているなか、2個の過給気は「エッツ?」と思わざるを得ない。ところが、ところが、VWは「最小の燃料で最大のパワーを」と、これを開発コンセプトに掲げ、排気量の小さなエンジンと2個の過給気により、見事に目標を達成したのである。過給気が組み合わせられるエンジンは直噴の1、4L DOHC4気筒。最高出力170ps/6000回転、最大トルク24、5kg・m/1500回転を発揮する。TSIの車両重量1410kgから計算すればトルクは十分過ぎるほどだということが走る前からわかる。スーパーチャジャーとターボがどのように連携プレイを見せるのか興味が沸く。エアフルターを通った空気が最初にスーパーチャジャーを加圧。スーパーチャジャーをエンジン回転の5倍の速度で駆動。アイドリングよりわずかに上の回転域で高い過給圧を発生する。1500回転域で2.5BAR。エンジン回転が3500回転を超えると過給はターボだけとなる。しかし、説明されただけでは、どうにも掴みようがない。クルマに乗り込む。インテリアはシックな飽きのこないデザインでまとめられ、TSIが大人のクルマであることを実感する。けしてガキのクルマではないぞ。
攻めの走りも楽しい、TSI
スタートしてすぐに驚かされるのは、1.4L の4気筒エンジンにしてはケタはずれの力持ちだということ。2個の過給気がしっかりと働いていることは頭から吹っ飛んでしまう。気を取り直して、あらためて発進をすると、その加速は恐ろしいほど滑らか。「過給気が何千回転でどうなる、こうなる」はまるで関係ない。走りだしからスムースすぎる。アクセルを操作するたびに「まさか、本気か1.4L エンジン?」という気にさせられる。さらに6速GDSの小気味いいA/Tが敏感なレスポンスを見せ、スポーティドライビングの世界に、簡単に誘い込む。いやはや、楽しくて、ワクワクさせてくれるクルマである。インテリアはシック、派手は奇をてらう部分はまるでない。シートのホールド性、お尻と背中を包み込み、そしてソフトな反発力で身体を支える座り心地は、かなりの上質感を備えている。まさにGT。楽して、楽しみながら長距離移動のできるクルマと言わざるを得ない。
室内の印象はドライビングを楽しむタイト感があるものの、圧迫感はない。どうやら、ここらあたりの雰囲気が国産でCセグメントクラスを狙ったクルマとの大きな差だろう。ファミリーカーとしての能力と、スポーティムードに溢れる性能が高い次元でコラボレートしたクルマである。ちなみにカタログデータによる10・15モードはゴルフシリーズトップの14km/L 。それでいて動力性能は2、4L エンジン並みの実力。4気筒2、4L NAエンジン搭載車のトヨタブレイドが13.4km/L 。わずかではあるがゴルフに軍配ということになる。
ゴルフGT TSI。気になる高性能な省エネモデルと断言しようか。2、4L 車並みの性能を発揮しつつ、それでいて好燃費。信じられないような話だが、そんなクルマが日本に上陸してしまったのだ。ヨーロッパCセグメントを目論んだ国産勢、余裕をカマしている場合ではなさそうだ。
輸入車コンパクトクラス人気ナンバーワンのゴルフ・トゥーラン。ツインチャジャーエンジンが与えられてのフルモデルチェンジで登場!
ゴルフGT TSIに遅れること3ヶ月。トゥーランがフルモデルチェンジを受け、何と好評のツインチャージャーエンジンを搭載して登場した。ゴルフ・トゥーランはフォルクスワーゲン初の7人乗車コンパクトミニバンとして04年4月に国内販売を開始。以来、インポートミニバンクラスで人気ナンバーワンの販売実績を誇るクルマ。そのトゥーランに、ゴルフGT TSIで好評を得ているツインチャジャーエンジンが与えられたのである。トゥーランに搭載されるツインチャージャーエンジンは140ps発生のマイルドバージョンとゴルフGT同様170ps発生の2種のエンジンが設定されている。140psエンジンモデルはトレンドライン。170psモデルはハイラインだ。とはいえ、そのエンジン出力差を感じるのは「ここ一発!」の加速が欲しいと思う高速道路での追い越し加速時。過給圧を低めに設定された140psエンジンで、何の不満を感じないのだが、170psエンジンの加速を体験すると「なるほどこれは大したものだ!」と、その俊敏な加速ぶりに驚かされる。ゴルフGT同様とても1,4L エンジンのクルマとは思えない動力性能を見せつけてくれるのだ。トランスミッションは勿論、DSG。すばやく、キレのいいシフトアップとダウンを披露してくれる。
ボディの剛性感、居住空間の余裕、装備など国産の2リッタークラスのミニバンと比べると妙にユーザーに媚びた玩具的感覚はまったくない。機能一点張りという気もしないでもないが、クルマを知り尽くした大人が満足できるクルマに仕上がっているといっておこう。トンカツについてくるキャベツの千切り。アイスバインについてくるザワークラウトの差があからさまに感じられるコンパクトミニバンだ。食い物の違いがクルマ作りにこれほどの差を生むとは……。
Written by 西村 光生
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