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第12回 スズキ/スイフト
キビキビと走って、扱いのいいコンパクトカー。このところ注目を集めている。ところが、各メーカーとも「これで、どうだ!」と言わんばかりのゴテゴテと豪華で過剰な装備を売りにしている。そんな中、スズキはそこそこの装備でシンプル・イズ・ベストを貫いている。マイナーチェンジを受けたスイフトは1.3リッター並みの性能を発揮する新開発の1.2リッターエンジンを搭載。キビキビと元気な走りは、なかなかどうして、悪くないのだ。
新導入した新開発1.2リッターエンジン。やるなぁ、スズキ!
足代わり、下駄代わりに気軽に乗れる日常生活に密着したクルマというのは便利でありがたい。その代表格といえるのは軽自動車。しかし、世の中には軽自動車は嫌いだという人も少なくはない。
そんな中で、今、注目を集めているのがコンパクトカーと呼ばれる小ぶりなクルマである。ところが、各メーカーがアメ、アラレと登場させているクルマは、コンパクトとは名ばかりなのである。見た目は確かにコンパクト。ところがボディサイズは5ナンバー枠ギリギリ。気になる全幅、つまり横幅は1690ミリもある。けして小さなコンパクトとは言えないのが現状なのである。
今回、マイナーチェンジを受けたスズキ・スイフトも見た目は可愛い印象なのだが、やはり全幅は1690ミリ。ちょいと悔しい気にもなる。
ところが、実際にクルマに乗ってみると前後左右の見切りはいい。それに運転がしやすいのだ。初心者でも車両感覚が掴みやすいクルマといったらお解りいただけるだろう。
さて、今回スイフトが受けたマイナーチェンジの目玉は新開発エンジンの搭載とCVTの採用だ。これまでのモデルは1.3リッターエンジンを搭載していたのだが、新開発エンジンは1.2リッター。一般的に「新エンジン搭載」とくれば、従来より排気量の大きなエンジンというのが世の常。ところがスズキは1.2リッターエンジンと、これまでの常識を覆す手段に出たのである。参考までに新エンジンの性能は最高出力66kw(90ps)/6000回転。最大トルク118N・m(12.0kg・m)/4400回転。1.3リッターエンジンとの比較は出力で1ps。トルクは同じだ。
新開発の1.2リッターはピストンを始め、各部の抵抗の低減、燃焼の均一化など熱効率の改善を実施。1.3リッターエンジンに劣ることのない高出力、低燃費を達成。排ガスの制御に貢献している。1.2リッターエンジンながら1.3リッター並みの性能を持ち、燃費に優れたクリーンなエンジンを搭載したのである。CVTとの組み合わせにより20.5km/リットルを達成しているのだ。
エンジンでエコ、CVTでもエコと二段構えだぞ。
走り出すと、エンジンの応答性のよさに驚く。キビキビとしたレスポンスで気持ちがいいのだ。元気一杯のコンパクトカーと表現して間違いない。
加速、減速が繰り返されるような、運転そのものが楽しめる山岳路ではエンジンは元気に反応するが、CVTの反応にタイムラグがあるような印象だ。スポーツモードにシフトすると、小気味いいエンジンレスポンスを楽しめるが、エンジン回転が高くなり、せっかく低燃費を達成したエンジンだけに燃費が気になってしまうのだ。
しかし、一般路、一般市街地などではCVTのDレンジで何ら不満は感じない。ATとは違う無段階変速のスムーズさと静かな室内で快適な走りを発揮してくれる。
「スズキはなかなかやるもんだ……」と痛感させてくれる。
サッカーの稲本選手のCM。あれはスイフトのよさをサッカー選手の足捌き、フットワークをイメージしてのことだろう。一般路で見せる走行性能はサッカー選手の素早いフットワークを思い起こさせるのだ。上質なスポーツシューズのイメージがあり、けしてゲタ代わりのクルマではないといっておく。
まさにスポーツ、胸ワクのスイフト・スポーツ。
スイフトのホットバージョン、スイフト。スポーツ。ステアリングを握るたびに感じるワクワク感はなんとも言えず、クルマの運転が楽しいものだと認識させてくれる。
当然ながらスイフト・スポーツもマイナーチェンジが実施された。MT車の1、2速をクロスレシオ化、最終減速比のローギヤード化。そしてエンジントルクの最適制御、4輪ブレーキを独立して制御しタイヤのスリップや横滑りを制止する車両走行安定補助システム「ESP」を標準装備とした。
運転を徹底して楽しめるスイフト・スポーツ。低燃費でフットワークのいいスイフト1.2。どうにも一言で「こっち!」とは言いがたいが、魅力的なコンパクトに間違いない。
Written by 西村 光生
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次回もお楽しみに! |
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