| 第18回 シトロエンC4 ピカソ 上品過ぎる印象のシトロエン製ミニバン「C4・ピカソ」実用ファミリーカーよ呼ぶには、ちょっと抵抗が。コ洒落た感覚はフレンチ風味、どうやら、スナック菓子をバリバリ食らうお子様には不似合いなミニバンかも……。
 
 ピカソといっても、あのピカソとはほとんど無関係。どこにピカソ的が隠れているやら!「ピカソって、あのパブロ・ピカソと何か関係があるのかしら?」
 とある喫茶店でテーブルに置いたC4ピカソのカタログが目に入ったのだろうか、若い娘が、そんなことを口走った。
 ピカソといえば、あのグチャグチャの顔を描くフランスを代表する画家、芸術家である。そのセンでいけば何でもカンでも「ピカソ」と名前が着けば、ちょいと風変わりでファニーな世界を想像してしまう。フランスのクルマで、ピカソという名前。美大に通う女子学生の頭の中で様々なピカソの描いた絵が浮かんでは消えたのだろう。クルマのデザインから内装までピカソが描いた人の顔のようにハチャメチャなクルマを想像したらしい。ヘッドライトは左右で場所も違うし形も違う。タコメーターやらスピードメーターもあちこちに散らばっていたら、それこそピカソ的で面白いことになりそうだという。
 カタログを開いてページをめくる。そこにある写真は、彼女が想像しているようなクルマではなかった。スポーツカーでもないし、フランス映画に出てくるようなクルマでもない。このところ、街に溢れているミニバンである。
 ピカソ的なクルマなら、それは見て楽しいクルマになりそうだがクルマには決まりがあってなかなか、そうはいかない。
 ボディデザインは自由だがそれ以外は難しいものなのだ。
 でも、大胆不敵に、フランス小話風に「ガツンと一発!」キツ目なシャレがどこかにあってもよさそうだ。とにかくピカソなのだから……。
 さて、C4・ピカソ。そのスタイルはどこから見てみても、眺めてもミニバンだ。
 フロントは正に、シトロエン顔。左右のヘッドライトに繋がったグリルモールの中央には例のダブル・シェブロンが誇らし気。デザインの元になっているのは創業者のアンドレ・シトロエンが製造していたダブル・ヘリカルギヤ(ヤマバ・斜歯車)をデザイン化したものだ。
 売りは7人乗車と賢い6速EGS見ようによっては『ヤマサ醤油』の『サ』抜きを二つ重ねたようでもある。
 C4・ピカソのウリは2+3+2の3列シートを備えていることと、グレードによって新型6速(EGS)エレクトロニクス・ギヤボックス・システムが設定されていることだ。
 6速マニュアルトランスミッションをベースに電子制御油圧アクアチューターコントロールシステム。スピーディで正確、スムーズなギヤシフトを実現している。無論、燃費向上に貢献していることはいうまでもない。
 広々とした視界とルーミーな室内。健全な家庭と家族を連想させる。ボディサイズは全長4.59m、全幅1.83m、全高1.66m。3列シートのミニバンとして平均的だ。しかし、室内に収まると、外観で見るよりも余裕がある。やたらと広いフロントウインドに目が引き付けられる。多分、サンバイザー分程度はルーフ部分に食い込んでいるだろう。さらに大きなグラスルーフで車内は温室のような雰囲気だ。
 家族揃って、楽しいドライブを思わせてくれる。いやはや、見事なファミリーカーというしかない。
 とにかく、走りはスムーズ。シトロエンのお家芸を尻と背中に感じさせる。適度にソフトで、踏ん張るところはしっかりと踏ん張る。腰が強いというのか鍛えられた足腰でもいうのだろうか。路面の凸凹をヤンワリと受け止め、そしてしなやか。気分のいい乗り心地を提供している。それにシート表皮の素材もズレを感じさせず、しっかりと身体をホールドするシート形状と、やんわりと衣服を捕まえるような感触はなかなかのものといっていい。ここらあたりに国産車との違いを感じさせてくれる。
 洒落て乗る。気取って乗る。どちらもにたようなモノだけどユニクロよりはGAPが似合いそうな雰囲気もあるが、どうせなら、ピカソ的いでたちでファミリードライブを楽しんでみたらどうだろう。
 Written by 西村 光生 |