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第29回 新型クラウンのお話。
誰が何と言おうとクラウンはクラウン。
とは言え、はっきり言って、
「いつかはクラウン」
「目指せ、クラウン」
と、言っていたあの時代のクラウンとクラウンが違う。
その昔、ライバルと言われたグロリア、セドリックは消滅。 フーガが唯一のライバルだとか、人は勝手にライバルとしているが、果たしてフーガがそうなのか。
いやはやベンツ、ビーエムかかって来い!と、これが今度のクラウンだ。
嬉しいことに、勢いがいい。
一度、ステアリングを握る価値は十分にあるぞ……。
クラウンと言えば、押しも押されもしない日本を代表する高級乗用車である。
日産シーマ、トヨタ。セルシオが登場する以前は国産乗用車の頂点に君臨していた。
それこそ「いつかはクラウン」であり「目指せ、クラウン」と、みんな国産乗用車の頂点の立つルマに乗ることを目指したのだ。
そんなクラウンだが、デビューは1955年。 団塊の世代と呼ばれる人口過密世代が物心ついて「ブーブ、ブーブ」と目で追い、指さしたクルマこそがクラウンだったといっても、間違ってはいないだろう。つまり、言い方を変えればクラウンは団塊の世代とともに成長、発展してきたクルマであり、目指すべきクルマだったのだ。
そのクラウンがこの3月、フルモデルチェンジを実施。13代目クラウンの登場となったのである。
新型クラウンの前、クラウンは新たなクラウンとして2003年にゼロクラウンとして四年前にデビュー。これまでのクラウンとは一線を画したV6エンジンにシーケンシャルシフトマチックを採用。「ただのクラウンだと思うなよ」と、そんな雰囲気を振りまいていた。
それから5年、13代目として登場したクラウンはライバルと思しきヨーロッパ製のセダンとは異質の高級さと快適さを備えたクルマとなっていた。
基本的に正統派ロイヤルと、色気を捨てきれないユーザー向きのアスリートと、2タイプで構成されている。
ロイヤルは正直言って以前までオトッアン・シリーズという雰囲気を持っていた。はっきり言って爺好みだったと言っていいだろう。ところが、ところが日本人のための高品質乗用車、行き着くところにあるクルマと見た。
団塊の世代が目指すべきクルマといっていい。 運転すればクラウンならではの楽しさが味わえ、リヤシートでふんぞり返っているのが、いかに馬鹿げたことかわかる。
一方、アスリートは、クラウンのスポーティモデルといった位置関係だろう。大昔、そうは言っても三十年ほど前だろうか、クラウンSというグレードもモデルがあった。「あっつ、俺、それ知っている……」というのであれば、その人は間違いなく、爺か婆である。これを自信を持って言えるのは、私と同世代だからである。
「いまさら若ぶってどうする!」
多分、これが団塊の世代人間が、今を語るときのキーワードではないだろうか……。
その昔の大昔。
植木屋だったと思う。出入りの職人が、まだ4、5歳の悪戯小僧を捕まえて、「女が好きなオースチン!」と、その職人が話しかけて、にやりと笑った。
かすかな記憶を辿って思い出した。クルマを揶揄する戯れ言である。しかし、この戯れ言を子供が理解することは無理だ。
クラウンという名前を耳にすると、当時の植木屋の顔とオースチンという言葉の響きが、ふらっと頭を過ぎることがある。
植木職人が「女が喜ぶオースチン……」と言った、その戯れ言の意味がわかったのはずっと、後のことである。2代目クラウンの時代ではなかったか。
記憶の糸を辿って行くと、初代クラウンが登場した前だか、後だか。イギリスのオースチン、ケンブリッジというクルマがタクシーで都内を走っていた。
確か日産でノックダウン生産されていたクルマだったと思う。そうそう、この時代、日野自動車がルノーをノックダウン生産していた。料金六〇円のタクシーとしてそこらを走り回っていた。
クラウンはクラウン。どこから見ても、クラウンでなければならない。あの王冠マークこそ、クラウンがクラウンであるべき証だ。そのお約束はフロントグリルのど真ん中に、その証は堂々と君臨していた。
そして運転席から目に入りやすい場所にも「これでもか!」と言わんばかりに大小、サイズ違いの王冠が……。
走りだして「これだよ、これ!」と思わせるのは、その乗り心地。しなやかに動く足回り、手応えを感じさせるステアリングレスポンスと向上した直進安定性。
文句なしにいいのだ。「ベンツが何じゃ、BMWがナンボのもんじゃい!」と、そんな気にさせられる。
いわゆるクルマ通、評論家らの言葉を借りれば乗り心地がイマイチ、サスの動きに滑らかさが不足している。荒れた路面で走行騒音がどうのと、それぞれに言いたいことを言っている。しかし、普通にドライブし、乗せられている限り文句なない。
それこそ快適の一言に尽きる。
さらに、注目は新装備。先行するクルマに追突する勢いで(居眠り運転風)迫ったとき、居眠り運転と判断として警告を発する居眠り感知機能付プリクラシュシステム。
ナビシステムと連動した交差点での注意喚起。可変ショックアブソーバーと進化型自動バック装置、コーナーの有無を認知しコーナー手前で減衰力を制御する装置などなど
「大きなお世話」という表現も、間違いではないような作り手側の自己満足といえるモノも満載されている。
これらが、いいかどうかはユーザー自身が選ぶことになるはずである。
日本国内を走っている限り13代目クラウンはイチャモンのひとつもつけられないクルマといっていいだろう。
気になる価格はロイヤルサルーンシリーズが365万円から528万円まで。但し、これらに好みのパッケージを追加すると、価格は跳ね上がる。
アスリートシリーズは374万円から487万円。それぞれのグレードに装備充実のパッケージも設定されている。
尚、同時発表されたハイブリッドモデルの販売は5月からとなっている。
価格帯は596万円から619万円。燃料高騰の時代、地球環境を真剣に考えると、やはりエンジン+モーターハイブリッドシステムは真剣に考えなければいけないだろう。
Written by 西村 光生
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次回もお楽しみに! |
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