第1回 印度、いんど、インド。INDIAN……。
インドへ行くことになった。
まだ、いすゞが日本名、ビッグホーンやウィザードといったSUVを販売していた、その末期というべき時期である。
それは一本の電話から始まった。
「いすゞの四輪駆動車でインド、ヒマラヤ近辺の旅をしませんか、ウフフ……」
誘いはいつだって、唐突で突然。いきなりである。
確か、そのような誘い文句だったと記憶している。
当時、いすゞ自動車の広報部に在籍していた辻村さんは、電話の向こうで含み笑いを押し殺すような声で、喋ったと思う。
多分、一言、二言喋った後に、笑いをかみ殺していたに違いない。
それは、何の前触れもない無責任な悪魔の誘いと人はいうかも知れない。
だが、誘う側も遠慮、躊躇いがあったに違いない。
何といっても、その場所がインドである。
カレーに始まり、ヨガ、コブラ使いにターバン男にサリーの女……。
映画の国であってTI先進国でもある、とにかく神秘も神秘、大神秘の国である。
宗教だってヒンドゥ教の国、仏教も、ジャイナ教、ゾロアスター教も少々。その他モロモロ……。それにどこかの寺院にはエロチック彫刻もあるという。
そのインドにイスラエル人グループと共に行かないかというのだ。
誘いを掛けてきた側からすれば、その辺りの事情がわかっていて、誘い文句の後に、笑いがこみ上げてきたのかも知れない……。
「何ぃ、インドだって……」
<続く>
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