第6回 初っ端からインド下痢!。
食事を終えると、どうにも腹の具合が思わしくない。下痢気味になった。
いくらなんでも高山病ではあるまい。
インドに到着してから口にする物には注意をしている。 これからクルマが置かれている場所に移動のはずだ。どのくらいの時間移動するのかわからない。
出発前、便所に駆け込む。
多分、こんなに綺麗で豪華、清潔な便所にはお目にかかれないだろうと、ゆっくりと用を足し、ついでに予備のトイレットペーパーを失敬した。
観光バス二台はデリーを離れる。どんどんと離れて田舎方面を目指す。二時間ほど走って休憩である。
田舎の土産屋か、それともインドローカルのドライブ・インなのか、バスは停まった。
タイミングを見ていたかのように、腹がシクシクしてきた。
「ヤ、ヤバイ。トイレはどこだ?」
トイレットペーパーを手に周囲を見渡すと、掘っ立て小屋がある。サリーを纏った色黒のおばさんが、掘っ立て小屋の前でどっかりと椅子に座っているではないか。
「トイレか?」
こっくり 戸を開けようと、汚い取っ手に手をかけると、その手をむんずと掴んだ。
「マネ、マネ!」と手を出す。
しかし、金の両替はしていない。参った。
漏れそうな雰囲気なのである。
仕方がない。クルマの置いてある場所まで同行するという、空港で出迎えた男に事情を話す。
あれはいくらだったのか。コインを奪って、慌ててトイレに引き返す。
おばさんにコインを渡すと、半ば強引にトイレに入った。おばさんは外で何やらガナリたてているが、ヒンディー語は理解できない。
凄く、強烈なトイレだった。大きな穴が掘られ、強烈な匂いで満ちていた。
薄い平板が、角材の上に乗せられただけで、足元は不安定でグラグラ、ユラユラ。
そんなことにかまってはいられない。
咳き込み、同時に目がシバシバ。目を閉じ、息を止め、踏ん張る。
出すものを残さず始末しなければ。そっちのほうが先決問題である。
短時間で用を足した。いくらなんでも、もう、残ってはいないだろう。
最後にプゥーとガスが出た。
さっぱりとした。これで、あとは大丈夫だ。失敬したトイレットペーパーが早速、役立った。
どこまで行くのか、あと何時間か。いわゆる日程表を受け取ってはいない。
すべてが「あなたまかせ」の冒険旅行なのである。
ホテルからスタート地点と思われる、クルマが置かれた場所まで延々とバス移動だ。バスはガンジス川沿いに北に向かう。多分、4時間近く走った。
そして日暮れ、クルマが置かれている素朴な村、チャウパイに到着した。
朝から、この時間まで、とてつもなく長い一日。
まだ終わりではない。
<続く>
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