第8回 いすゞチャレンジはセレブそのものの、冒険旅行だ。
いすゞチャレンジと呼ばれるイベント、これがなかなか複雑な事情の上に成り立っていることがわかってきた。
主催はイスラエルのいすゞ車インポーターである。そのインポーターが冒険旅行に参加したい人間を一般公募する。
そしてメインイベントの前、審査と称してビッグホーンのオフロード運転テクニックやキャンプ、ファーストエイドの手ほどきをして、参加者を選ぶのだ。
「あなたは参加OK」ということになると、冒険旅行の参加資格が与えられる。
参加者は招待ではなく、それなりの旅行代金を払って参加するのである。
その証拠に参加者らはセレブで上品な人ばかりに見えた。
有料参加者には綿密なスケジュールが知らされているが、取材参加のメディアにはそんなものは配られない。
意外性やら驚きを与えようという魂胆なのだったのだろう。
支給されたテント小さな二名用。時期的には春の終わり、デリーの北である。
そこに零下20対応の寝袋で寝ろというのだ。
粗末な食事をいやいや我慢して食べ終わると、寝るしかない。
蒸し暑くて湿気はムンムン。テントの中は最悪だった。
闇夜に霞む色黒のインド人がキャンプサイトを一晩中、うろつく。
でも、寝なければ体力が持たない。
羊が一匹……。
いやいや、ここはインド風に、野良牛が一匹、野良牛が二匹。
眠りの世界の扉を開いた。
そう、デリーの街でうろうろしていた牛はインド原産(?)のインドコブ牛という種類で、立派な長いツノを持ち、背中というか、首の付け根に瘤があるのだ。大きさもかなりでかい。特に、雄の大きさは、乳牛とは違う。牛のLLサイズだった。
翌朝、テントの外が騒がしい。睡眠不足気味のまま、朝を迎えた。
夜が明けると同時にインドヤジウマがテントの回りを徘徊して騒ぎ出す。
クラッカーにビスケット。ティーバッグにお湯が配られる。これが朝食だった。
人が三々五々、集まりだした。
これから村をあげて、出発のセレモニーが始まるのだ。
軍楽隊が現れ、村長をはじめ、村のお歴々。
最後にお坊さん(?)らしき人物が妙齢の巫女(?)らしき女性を伴って現れた。
バグパイプを中心とした軍楽隊が行進曲を演奏しながらパレードをする。
多量の花がクルマを飾る。旅の無事を祈ってクルマと人間に何やら祈りを捧げる。
額の真ん中、眉間近くに赤い塗料を塗られた。
インドの人が、眉間に施す、あの赤ポッチだ。
早朝は涼しかった村の広場は強い日差しを受けて、気温が上昇。どうにも蒸し暑い
出発してしまえば、クルマのエアコンで快適である。出発セレモニーはダラダラと、インドノラ牛のヨダレのように、いつ果てるともわからない。
テレビドキュメンター番組のシーンを思い起こさせる情景が目の前で繰り返され、参加者はみな、冒険者の気分になってしまった。
あくまで参加者はお客。イスラエル人が主役だ。
インフォメーションはヘブライ語で指示が出て、そのあとに英語で説明がなされる。
この日、インドの田舎の交通事情を体験するルートが設定されていたのだろう。
ガンジス川沿いの道をひたすら走る。
<続く>
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